2020/4/6
DXの事例を学ぼう① ~「ANA」の事例~
皆様こんにちは。 システムチームのまるです。 以前にブログで書きましたDXについてですが、 経済産業省、および東京証券取引所が...
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皆様こんにちは。
システム担当のまるです。
施設のフロア内をセグウェイで移動し、夜はAI搭載のロボットが消毒作業を行いながら巡回する、そんなデジタル機器を活用した介護施設や、介護現場におけるデジタル化の現状を紹介した番組が先日NHKで放送されました。
(「クローズアップ現代」 2022年2月1日放送)
さすがにセグウェイは不要ではないか?、と思いましたが、大変興味深く視聴しました。
人手不足が深刻化するなか、介護業界でも業務の効率化などを目的に「デジタル介護」が国や企業よって推進されています。しかし、デジタル機器への抵抗感や専門家の不在などでなかなか普及が進まない現実もあります。(今だに介護記録を複数の日誌に手書きしているヘルパー事業所が紹介されており、「今すぐこの事業所のシステムを作りたい!」と思いました)
そこで今回は、介護業界におけるデジタル技術(介護ロボット)や、それらを活用したDX事例、そして介護現場の未来像について書きたいと思います。
記録業務や請求などが出来る「介護システム」と共に、最近「介護ロボット」とという言葉をよく聞くようになりました。
介護ロボットとは、
・情報を感知する(センサー系)
・判断する(AIなど)
・動作する
という機能を有する機械のうち、利用者の自立支援や介護者の負担の軽減に役立つものを言います。
介護ロボット活用の領域は厚生労働省によって、以下のように6分野13項目で分類されています。
ベッドの下にセンサーを設置して眠りの状態や離床などを検知できるものや、利用者とコミュニケーションを行うものなど、様々な種類のロボットが製品化されています。
現在銀の櫂でも、移乗支援などの負担を軽減するアシストベルトやパワースーツを試用しており、実用性の検証を行っています。
しかし、動きにくかったり、仰々しくて使用しづらいなど、介護現場での実用化レベルまでは至っておらず、費用の面も含めて、これらの介護ロボットを介護現場で手軽に活用して成果を出すにはまだ時間が掛かりそうです。
番組でも、ベッドの下に見守りセンサーを設置してみたものの、使い方が分からず1週間ほどで取り外してしまった、という事例も紹介されていました。どんな有用な介護ロボットも、導入の目的を明確にして、使用方法の説明や、事業所なりの運用方法を確立できなければ、無用の長物になってしまういい例だと思いました。
番組では「デジタル介護」の最前線にいる法人として、「社会福祉法人 善光会」が紹介されていました。
この法人は、社会福祉法人として初めて介護ロボットの研究所(「サンタフェ総合研究所」)を設立し、システムやソリューション(解決手段)の自社開発、リサーチやコンサルティング、省庁連携プロジェクトなどを中心にした事業を展開しています。
介護ロボットの集中導入により得られた知見から、介護現場でICT・テクノロジーの活用を推進するためには、
・「運用できる人材」
・「ICT・テクノロジーを使いこなす環境の開発」
が必要だと結論づけています。
「運用できる人材」のソリューションとして、介護ロボット機器を効果的に活用するための知識を証明する「スマート介護士」資格を創設しています。(どこかで見たようなピラミッド表ですね・・・)
「ICT・テクノロジーを使いこなす環境の開発」のソリューションとして、「SCOP(Smart Care Operating Platform)」というプラットフォームを自社開発しました。
広範囲のプラットフォームなので、正直なところ私も全体像は把握しきれなかったのですが、主要な構成要素は以下の2つのアプリです。
・複数の介護ロボットの総合インタフェースとなる「SCOP Now」
・介護記録システム「SCOP Home」
これらの構成要素が一つのプラットフォームとして情報を共有し、「介護アウトカム(具体的な成果)」を創出するというコンセプトだと思います。
「SCOP」の効果実証によると、介護ロボット情報を集約し、介護職員が更に効果的に介護ロボットを活用することを実現したことで、夜間業務を37%、記録業務を76%、申し送り・伝達業務を74%効率化出来たそうです。
以上、介護ロボットと介護現場のDX事例についてご紹介しました。
番組では、介護ロボットを活用して業務の効率化を実現した事例も紹介されていました。
3人の職員が産休に入ることになり、現場が回らなくなるおそれがあったため、市が運営する「介護ロボット普及センター」に相談したところ、次のようなプロセスで業務の改善を行いました。
①業務の「見える化」
どの業務にどれぐらい時間をかけているか徹底的に洗い出し、どの業務がネックになっているかを明確化することです。
分析の結果、夜間配置の人数に改善の余地があることがわかりました。
②デジタル機器の選定
課題解決に適したソリューション(解決手段)を選定します。
今回の課題は夜間配置の見直しでしたので、巡回業務の削減につながるベッドセンサーの導入を決定しました。
③デジタル機器導入後の業務の見直し
デジタル機器を導入するだけではなく、これを活用できるような業務の設計を行います。
3人だった夜間職員を2人に減らす目途が立ちましたが、緊急時の対応が心配という声が上がったため、系列のグループホームから緊急時はサポートを受けられるようにしました。
この結果、職員の夜勤回数が減り、日勤帯の職員数が増えたので、サービスの向上にもつながりました。
このように、デジタル機器の導入は目的ではなく、あくまで手段です。
現場主導で、業務そのものをどうしたいか、どうするべきかという議論を行い、「あるべき姿」を描くことが先で、その実現のための手段として介護システムや介護ロボットの導入を検討する必要があります。
最後に介護現場の未来像ですが、介護業界において大きな節目になると言われているのが、「2025年」と「2040年」です。
「2025年」は、団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になる半面、現役世代の人口減少が加速していきます。また「2025年の崖」と言われているように、DXを推進できない企業や法人は、競争力が崖を下るように低下し、ふるいに掛けられることになります。
「2040年」には、団塊ジュニア世代が前期高齢者となり、15~64歳の生産年齢人口は6000万人に急減し、一人の高齢者を1.5人の現役世代で支えなければならない厳しい時代が到来します。
介護現場では介護を担う人材の不足が深刻化することが確実視されています。
このような状況で、介護現場の未来像はどのようなものになるのでしょうか。
一言で言えば、「限られた介護人材の、ケア効率化で生き残る」しかないと言われています。
介護システム、介護ロボットを限界まで活用し、真に介護職(人)がやるべきこと、やらなければならないことを厳選して集中できる(専門特化)環境を今から構築していかなければ、「その人らしい最後を迎えるために」という、介護の観念的な理想を追求することが出来なくなるのではないでしょうか。
どれだけ介護ロボットが進化し普及したとしても、介護は「人が為す」ことです。
介護システムや介護ロボットは、1分1秒でも「人が人を介護出来る時間を作る」ことが究極的な目的です。
そのために、私もこれから出来ることをしていきたいと思います。