DXの事例を学ぼう② ~「元湯 陣屋」の事例~

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採用情報|社会福祉法人あかね

皆様こんにちは。
システムチームのまるです。

最近、毎日新型コロナ感染者数を調べるようになってしまいましたが、6月15日現在で、兵庫県の感染者数が残り3名ということです。ピーク時と比べてよくぞここまでと思います。県民の皆様が一丸となって感染症対策に取り組んだ結果ですね!まだ油断はできませんが、ようやくコロナ後を考えることが出来るようになりました。休館していた合気道の道場も少しずつ再開しています。運動不足解消のためにも、早く普通に稽古できるようになってほしいです。

さて、本題ですが、今回は10億円の負債を抱えて倒産寸前の状態からV字回復を成し遂げた、老舗旅館「元湯 陣屋」のDX事例をご紹介したいと思います。
この旅館は、業界では珍しい週休3日を実現し、自社開発のクラウド型旅館システム「陣屋コネクト」が日本サービス大賞の総理大臣賞を受賞するなど、各方面から注目が集まっています。

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おさらい DXとは

おさらいですが、DXとは「デジタルトランスフォーメーション」の略で、意味は

デジタル技術による業務やビジネスの変革

となります。

以前書いたブログでもう少し詳しく説明していますので、興味のある方はご覧ください。

皆様こんにちは。 システムチームのまるです。 最近テレビで見ましたが、40~50代の間で筋トレが流行っているそうです。その理由ですが、 ...
皆様こんにちは。 システムチームのまるです。 以前にブログで書きましたDXについてですが、 経済産業省、および東京証券取引所が...

「元湯 陣屋」の事例

倒産まであと半年

「元湯 陣屋」は創業100年の老舗旅館ですが、10億円の負債を抱え、売却を考えるまでになっていました。先代社長の後を継いだのは、自動車メーカーの研究職だった息子さんと会社員だった奥さんで、二人は旅館経営は素人だったそうです。
半年後に資金ショートするという状況で経営を分析したところ、以下のような問題が見えてきました。

顧客情報や営業情報が前女将の頭の中や営業担当の手帳にしかない

売り上げの実績も紙で管理しており、社員は予算すら知らない

原価管理がずさんで無駄なコストが膨らんでいる

スタッフの間で情報がうまく伝わっていない(情報格差がヒエラルキーを生み、セクショナリズムが蔓延)

長い勤務時間、シフトも不定期になるため離職率が高すぎる(1年で30%が離職)

接客業であるにも関わらず、1日の8割がバックヤード業務に追い立てられている(接客サービスに注力出来ていない)

スタッフが単体タスク(布団敷き、部屋案内、見送りなど)をこなすのみで、リソースの使い方が非効率かつ柔軟性がない

経営改革と「陣屋コネクト」の開発

そこで、新しい社長夫妻は全社員にインタビューを行い、新たに旅館のコンセプトを決めた上で、次のような改革方針(経営戦略)を定めました。

1.低稼働率、高単価(付加価値)への方向転換

2.貴賓室を実験場として活用
(貴賓室を一般開放、貴賓室についてはチェックインから見送りまで一人で担当)

3.新規事業(ブライダル事業)をスタート

そしてこの改革方針を実現するために経営を支える基幹システムを導入することを決め、要件を満たす他社システムを探しましたが中々見つからず、他社システムはカスタマイズを繰り返すことでコストが膨らむうえ、時間もかかると判断し、自分たちで開発することに決めました。
たまたまフロント係に応募してきた人が元SEだったのですぐ採用し、システムの開発を依頼したそうです。

開発したシステムは「陣屋コネクト」と名付けられました。最初は「最低限の機能しかない、稚拙なシステム」だったそうです。クラウドを基盤としており、システムにアクセスするデバイスはiPhone、iPadを選択しました。システムに慣れないスタッフも多く、導入時はなかなか浸透しませんでしたが、開発を担当したエンジニアがスタッフと同じ社員寮に入って生活を共にすることで、業務の問題点の洗い出しとシステム導入の意義を浸透させていきました。
「陣屋コネクト」は旅館、ホテルに外販するまで成長し、導入施設は320ヵ所以上となっています。

その他にも、スタッフが規則的に休めるように、火、水を休館日にするなど、従業員満足のための施策も実施しました。

改革の成果

システムによる徹底した情報開示(パートでも売上、原価、会社の預金残高まで見れるそう)で組織内のセクショナリズムも解消し、従業員のマインドも変化したことで、指示待ちのスタッフが劇的に減ったそうです。例えば、原価を抑えながら料理の質を高めるにはどうすべきかなどの工夫が始まりました。

また、スタッフのマルチタスク化により、ほかの業務も手伝うようになったことで、違う立場の仕事の大変さを理解できるようになり、スタッフ同士がお客様の満足度を上げるにはどうすれば良いのか、お互いの負担を減らすにはどうすれば良いのかを考えるようになりました。

業務に適したシステムの導入はスタッフの心を動かし、一丸となってサービス内容の向上をもたらした結果、陣屋は黒字に転換し、2億9000万円だった年商も6億円を突破するようになり、営業日を週4日に減らしたにも関わらず無休の時に比べて約2倍の売り上げを実現しました。

業績改善はスタッフの待遇にも還元され平均年収は宿泊業界平均の約1.6倍となり、離職率も大幅に低下しました。

こうして陣屋はV字回復を成し遂げることに成功したのです。

まとめ

以上、「元湯 陣屋」のDX事例をご紹介しました。DXという単語は最近よく耳にしますが、非常に抽象的ですので、具体的な事例と併せて考えないとバズワード(無意味だが、かっこいい、それっぽい言葉)になりがちです。
私見ですが、DXは何らかのITC活用を通して、具体的な成果(数字)を成し遂げた際の結果論として語られるべきものだと思います。高額なITCを導入したとしても、結果として売上増、顧客増、業務時間短縮などの成果を出せなければ意味がないので、最適なITCを選定する、成果を出せるよう成長させていく、というスタンスと継続的な取り組みが大切なのではないでしょうか。

もう一つ大切なことは、特に旅館業や介護などのサービス業に言えることですが、「良いシステム=良いサービス」とはならないということです。システムの役割はあくまで良いサービスを提供するための舞台を整えることであって、人(職員)の意識改革、業務改革を伴わないシステム導入は、結局大きな成果を上げることはできません。

単純なシステム導入ではなく、明確な経営理念・経営目標に基づいた戦略と、人(職員)、業務、システムの包括的な改革こそ、大きな成果を挙げるためには必要だと感じました。

おまけ

最近ブログ作成の参考にしようと「戦略室ブログ」の過去のブログを見ていますが、やはりカールさんの体を張った頑張りは本当に泣けてきますね・・・
特に以下のネタはエイプリルフールネタにしてはクオリティが高すぎて、ある意味クリエイティブチームの底力を垣間見ることが出来ました。(私的にはyoutube動画の1:25頃のソルさんのヒゲが爆笑でした)

また、この動画もなぜか英語になっているところに、久しぶりに爆笑してしまいました。

みなさま、是非ご覧ください。

 

ヴィラ杢園

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